12世紀のイスラーム世界をわかりやすく解説【アイユーブ朝】

アイユーブ朝が成立するまで、エジプトを支配していたのはファーティマ朝でした。しかし西アジア方面からのセルジューク朝の圧力に押されるなどして、ファーティマ朝の勢力は弱まっていきました。

そんな中、ファーティマ朝の宰相（カリフの補佐役のような役職）に就任したサラディンという人物が実権を握り、新たにアイユーブ朝を建設しました。

12世紀に入ると、セルジューク朝の一族が分裂して地方政権化して衰退します。そしてイスラーム世界の主導権はアイユーブ朝に移ります。

アイユーブ朝は十字軍との戦いで知られています。1187年には十字軍を破って88年ぶりに聖地イェルサレムを奪い返しました。

7世紀半ばからイェルサレムはイスラーム勢力の支配下にありました。しかし1099年、第1回十字軍がイェルサレムをイスラーム勢力から奪還することに成功し、イェルサレム王国という十字軍国家を建設しました。

イェルサレムはユダヤ教・キリスト教・イスラーム教の共通の聖地ですから、キリスト教の代表である十字軍と奪い合いをしていました。

見事にイェルサレムを奪回したアイユーブ朝に、第3回十字軍が派遣されます。

この時十字軍を率いたのがイギリスのプランタジネット朝の王リチャード1世です。対するアイユーブ朝はサラディンが率いました。結果は両者痛み分けといったところで、十字軍はイェルサレムを奪い返すことはできませんでした。

アイユーブ朝はトルコ人奴隷兵士のマムルークを使用していました。しかし強大化したマムルーク軍がクーデターを起こし、1250年にアイユーブ朝は滅亡しました。その後はマムルーク朝（1250～1517）がエジプト・シリアを支配しました。